FX初心者にもわかる「逆イールド」

逆イールドとは

逆イールドとは、短期金利が長期金利の水準を上回る状態のことを言います。

金利は通常、長期金利のほうが短期金利と比較して高い金利水準となる傾向にあります。金利変動に伴う債券の価格変動リスクが高く、資金回収までの期間が長いので、そのリスクに見合った利回りが求められるためです。

ところが、逆イールドは期間が長くなるほど金利が低下する現象であり、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩下がりの 短期金利>長期金利 となる経済状況のことを指します。

景気後退観測が長期金利に影響を与える

市場関係者が将来的に金利が下がるとみている場合に逆イールドは起こるため、一般的に景気後退の兆候として捉えられています。

米連邦準備制度理事会(FRB)や日銀が定めるいわゆる「政策金利」が短期金利に影響を与えるのに対し、長期の金利は市場参加者が持つ将来の見通しによって決まる仕組みとなっています。

この見通しは、国債の売買という形で現れ、将来の見通しに不安を持つと国債が買われ、利回りが低下、つまり長期金利が下がることになります。

逆イールドの景気後退懸念

ここ最近の株価が不安定になっている要因が、アメリカにおける逆イールドです。

2019年8月14日(水)の米国市場で、NYダウが前日の終値から800ドル下落(-3.05%)し、今年最大の下げ幅を記録しました。

米国で12年ぶり「逆イールド」

同日、米10年国債利回りが下落し、10年国債利回り(長期金利)が一時的に2年国債利回り(短期金利)を下回る、いわゆる「逆イールド」が発生しました。これは、リーマンショック前の2007年6月以来、約12年ぶりのことです。

この逆イールド化現象を受けて、14日の株式市場では銀行株が一斉に売りを浴び、米国株価が大幅に下落したというわけです。

今回のような利回り曲線のフラット化や逆転は、銀行業界に災いをもたらす現象とされています。それは、銀行の長期融資は短期資金でまかなう仕組みとなっているからです。低金利は景気と企業を支援する一方で、銀行の収益性を損なうことになりかねません。

またこの日は、30年物の米国債利回りが初めて2%を下回りました。

米3カ月物国債と米10年債では逆イールドが定着

今回、話題になったのは米長期金利(米10年債利回り)と米2年債利回りについての逆イールドですが、逆イールドは米2年債以外ではすでに発生していました。

2年債より、さらに満期までの期間が短い3カ月物国債が絡んだ逆イールドです。3カ月物国債の利回りと長期金利(米10年債利回り)では、2019年3月に逆イールドが発生しています。

それは一旦解消されたものの、5月下旬に再び逆イールドに陥り、それ以降は逆イールドの状態が定着したような状況になっています。

逆イールドは景気後退局面で発生する

はじめに確認しておきますが、逆イールドになったからと言って必ず景気後退(リセッション)に陥るわけではありません。その証拠や裏付けとなるものはありません。

ただし、米国の景気後退の直前には逆イールドが発生しています。

21世紀に入ってからは2000年のITバブル時と、2008年のサブプライムローン問題の末期に同様の状況に陥っています。

ITバブル崩壊のときは2000年4月に逆イールドとなり、米国景気は2001年3月からリセッション入り。
2008年9月のリーマンショック(の前兆)となる2008年1月(逆イールドになったのは2006年9月)が、2回目のリセッションとなっています。

要注意なのは、過去2回とも、逆イールド解消のためにアメリカの中央銀行FRBが利下げに動いたとき、株価が暴落していることです。



2回とも逆イールド発生の直後からFRBが利下げに動き、イールド自体はもとの形、つまり再スティープ化がはかられるようになった時点で突然株価が暴落を始める事態となっています。

そのため、過去の状況に詳しい人から言わせれば、逆イールドがもとに戻るタイミングがもっとも相場は危ないということが定説化しています。

「逆イールド」という現象が投資家の心理を悪化させる!?

米国債券市場での「逆イールド」の発生は、将来の景気後退観測が市場から発せられていることを意味しています。

もちろん、逆イールドの発生自体が、必ずしも景気後退をもたらすわけではありません。

しかし、多くの市場参加者が逆イールドを景気後退の兆候と考えているため、逆イールドの発生によって投資家が投資資金の回収を行うなど、景気後退をもたらす可能性もあり、逆イールドの発生は注目されています。

とくに、近年の相場はアルゴリズム主体の相場となっているせいか、一定の事象に対する反応がステレオタイプ化し、しかも過剰になりがちなのが気になります。

米国経済ついにリセッション入り目前か

世界の景気全体が減速傾向にあるなかで、比較的堅調に推移していた米国経済が、ここにきてやや減速感を強めつつあるといったところなのでしょうか。

海外の景気減速の影響をうける輸出、設備投資の弱さを、個人消費の強さで十分補っているのが米国経済の現状です。

逆イールドは、一般的に景気後退入りを示唆する重要なシグナルの1つであることが知られています。逆イールドになったことがすぐに景気後退入りを示すわけではありませんが、世界経済の減速懸念が一段と強まった格好です。

このほかにも、

  • 世界の長期金利が一段と低下
  • 米中貿易摩擦が再燃
  • 英国のEU離脱(ブレグジット)問題
  • 中国やドイツの経済指標が思わしくなかった
  • 香港での抗議デモの激化、泥沼化の懸念

などが、景気後退の懸念を高めて、株価を大きく下落させる要因になったことは確かです。

株式市場は将来の景気動向や企業業績を予想して変動するいわば「先行指数」ですから、株価が下落する局面では、以降の景気動向に対しては一層の警戒が必要になってきます。

株は未だ上昇する可能性を残している

逆イールドについては、過去の経験則に照らし合わせてみれば「半年から2年以内に景気後退が来る」というのが金融相場での通説となっています。

ですから、逆に言えばその景気後退局面が来るまで、株価は「ろうそくの最後の灯火」で上昇することも大いにあり得るということです。

実際にアメリカの企業業績は良い報告が続いています。しかも、低金利は株式相場にとってはメリットが多い。債券に投資しても魅力的な利回りが得られないのでそれなら株式へ投資した方が有利だからです。

なので、未だしばらくは米国株式を下支えする展開は続くと思われます。

景気後退はいつ起こる?

逆イールドが発生しようと、ファンダメンタルズ分析がいくらできようと、景気後退がいつ顕在化するのかまでは全く読めません。

2019年8月末現在、リーマンショック以降大きな金融ショックというのは発生していない、という事実があるのみです。

過去の景気後退局面では、いずれも直前に逆イールドが発生していることから、景気後退のサインが点灯したとみなすことはできます。なので、メディアは盛んにいつか大きな金融ショックが来ると警鐘を鳴らしています。

しかし、これがいつ来るのか?
それは、誰にも分からないことです。

明日かもしれないし、1ヶ月後かもしれません。あるいは、あと数年は来ないかもしれません。

安全資産として買われる米国債(米10年国債)は、リスクが相対的に小さい「安全資産」の代表例であり、世界経済の先行きの不安感が高まると買われる傾向にあります。

ですから、市場参加者が先行きの景気に不透明感を抱いているのも事実です。

なので、株式投資をやっていて下落相場が心配な方は、今のうちに「分散投資」など考えて備えておくことは必要かもしれません。

  • 銘柄分散:日本株式市場に投資する場合は、複数の企業に投資する。
  • 国際分散:世界の株式や債券などに幅広く投資する。
  • 時間分散:一括投資せず、投資タイミングを複数に分けて積立投資する。
  • トランプ大統領に翻弄されるマーケット

    トランプ大統領は、これまでも「株価が最高値近辺で対外強硬策、急落すると一転、融和路線となる」と言われてきました。

    8月に入ってそのトランプ大統領が「9月1日から中国製品に10%の追加関税を課す」と発言したことで、ドル円は108円台から105円台まで一気に急落します。

    第3週には、あわや105円割れかという水準まで下落するも、そこで反発すると、今度は「一部の商品について、追加関税を12/15まで延期する」と発言したことで107円近くまで戻しています。

    しかし、その後に発生した逆イールドや、中国の報復措置の発表で再び下落しました。

    このように米国の金利動向と、米中貿易摩擦の問題を巡るトランプ大統領の発言には大きく振り回される相場状況となっています。

    連邦準備制度理事会(FRB)の対応に注目

    8月24日、注目されたジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演を受けて、米10年債利回りは低下、2年債利回りが上昇しました。長期金利と短期金利の利回り格差が縮小しました。

    そして、その後の8月27日、米国債は長期金利(10年物)が短期金利(2年物)が逆転し。逆イールドが再び発生しています。

    さて、FRBが開く金融政策の最高意思決定機関である次の連邦公開市場委員会(FOMC)は9月17・18日です。この会議でも0.25%の利下げが発表されるというのが市場のコンセンサスになっています。

    日本経済にとって厄介なのは、FRBが利下げに動くと、円高が進むことです。米金利が0.25%下がると、1ドル当たり2~3円、円高が進むとされています。

    年単位でみれば、アメリカの景気後退局面入り、地政学リスクの高まりや世界的な緩和傾向の中で、日本の金融緩和に限界が来ていることを考えると、「大幅な円高」局面が来てもおかしくはない現在の状態となっています。